郵政研究所月報
1998.5
公益事業における情報公開
―電力・ガス・民鉄・水道事業の場合―
第一経営経済研究部研究官 藤田 孝
【要約】
1 はじめに
公益事業が、説明責任(アカウンタビリティ)を果たす上で重要となる、経営効率化及び料金改定の情報に関して、最近情報公開が進む、電力、ガス、民鉄、水道事業の現状について、調査した概要を述べる。
2電力
全国電力10社の経営効率化に関する情報公開は、自らの経営効率化について利用者に対し理解しやすい形でまとめたもの(東京電力「経営計画の概要」等)を各社が独自に作成し、公表している。この中で、経営効率化の説明として、整備投資額や社員一人当たり販売電力量等の経営効率化指標に対する目標値及び実績値の公開を行っている。
料金改定に関する情報公開は、申請理由や料金改定理由等の申請概要を報道発表及び利用者窓口で利用者に対して公開しているが、それに加えて、業界団体である電気事業連合会が、そのホームページ上で、料金算定のしくみや基礎データの公開を行っている。
3 ガス
ガス大手4社の経営効率化に関する情報公開は、電力と同様、自らの経営効率化についてまとめたもの(東京ガス「経営効率化への取り組みについて」等)を各社が独自に作成し公表している。ただし説明に用いられる経営効率化指標は、電力と比べて少なく、一方で環境問題や安全性向上への取り組みに関する項目のウェイトが高くなっている。
料金改定に関する情報公開は、申告理由や料金改定率の申告概要を報道発表及び利用者窓口で利用者に対して公開している。一方業界団体である日本瓦斯協会のホームページでは、電気事業連合会と異なり、環境・エネルギー問題への取り組み状況などのPR活動が中止に行われており、料金改定に関しての情報公開は行われていない。
4 民鉄
大手民鉄16社の経営効率化に関する情報公開は、報道発表や広報誌(「東急からのお知らせ」など)によって行われているが、断片的であり、また電力、ガスに比べて、公開されている項目も少ない。そこで、民鉄の業界団体である日本民営鉄道協会が「大手民鉄の素顔(年刊)」と「みんてつ(月間)」を発行し、大手民鉄全般の情報の公開を行っている。この中で、社会的養成である混雑緩和のための設備投資が増大している状況について、特に強調された説明がされている。
運賃改定に関する情報公開は、申請理由や料金改定率等の申請概要を報道発表及び広報誌を通じて公開している。なお、運輸省が、報道発表及びインターネットで運賃改定の基礎データとなるヤードスティック査定に用いる数値データの公開を行っている。
5 水道(東京水道局)
東京水道局の経営効率化に関する情報公開は、平成11年度までの現行料金水準の維持を主要な目的として策定された「水道事業3か年(平成9年度〜11年度)」の中で主に行われており、この中で、職員定数の削減数や諸経費の節減額等の経営効率化指標に対する目標値の公開が行われている。
料金改定に関する情報公開は、改定理由や改定率などの概要を報道発表および広報誌で公開し、さらに需給見通しや収支不足額を示した財政措置計画などを掲載した説明資料を作成し、料金改定の根拠として公開している。
6 おわりに
公益事業における情報公開は、この数年間の間に審議会の提言や行政機関の働きかけなどによって、各事業体及び行政機関が積極的に取り組む姿勢を見せており、情報公開はさらに促進されるようになったが、一方ではアクセスが不便で利用者に解りにくいといった点や、部門別サービス別の原価に関する情報公開が不十分であるといった点など、情報公開が進んでいないといえる部分もある。
郵政事業においても、郵政審議会答申の提言を受けて、今回調査した電力、ガス、民鉄、水道事業の情報公開の実態を参考にし、一層の工夫した情報公開への取り組みが望まれる。 |
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