季刊 個人金融2025年冬号
発行年月 2025年1月
特集
金融経済教育の将来展望
2024年度においては3回にわたり、学校や職場における金融経済教育という視点での分析・考察を行ってきました。
冬号ではその締めくくりとして、J-FLEC(金融経済推進機構)の講演録を掲載するとともに、高齢者、生活困窮者、在日外国人などこれまで金融経済教育の対象から漏れてしまいがちだった人々への支援について考察します。
加えて、今後の新たな方向性として、ICTを活用した金融経済教育やSDGsに関する教育との接点について展望します。
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目次
特集
【講演録】日本における金融経済教育の課題とJ-FLECの果たす役割
金融経済教育推進機構(J-FLEC,ジェイフレック)
理事長 安藤 聡
【ポイント】
本稿では、日本金融学会・秋季全国大会における金融経済教育推進機構(J-FLEC)安藤聡理事長の特別公演の内容を紹介する。
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金融教育の不均一な効果
ー既存研究から学ぶ金融教育の課題ー
㈱パパラカ研究所 取締役 荒木 宏子
【ポイント】
既存の研究によれば、金融経済教育の経験がその後の金融行動に与える影響は、教育の内容や対象、タイミング、さらには直接観測できない個人の選好の異質性によって不均一であることが示されている。日本の金融教育における課題を明らかにすべく、個人レベルの長期的な金融教育と金融行動を補足したデータの蓄積が望まれる。
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高齢者の金融リテラシーの変化と金融行動
名古屋学院大学 経済学部教授 上山 仁恵
【ポイント】
高齢者を対象にした2時点間のパネルデータを用いた金融リテラシーの変化の要因分析によると、心身機能の低下の自覚が高い人ほど金融リテラシーの水準が低く、金融リテラシーの低下も大きい。金融機関における高齢顧客との金融取引では、心身機能の低下の自覚の状況から金融リテラシーの状況を捉えられると考えられる。また、金融リテラシーが高い層は、知識の低下する余地が大きいためアフターフォローなど、より注意が必要である。
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生活困窮者及び支援者のための金融経済教育
国立大学法人国立大学機構
岐阜大学 教育学部教授 大藪 千穂
【ポイント】
我が国においては、生活困窮者やその支援者に対する金融経済教育までは実施されていないのが現状である。生活困窮者については、自分で試行錯誤できる「生活設計者ゲーム」の普及や家計簿記帳の研修と促進が、また、生活支援者側については、支援者用の金融経済教育プログラムが必要である。更には、生活困窮者間、支援者側でともに相談し合え、専門家に相談できるプラットフォームも必要である。
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在留外国人(移民)に対する金融教育の課題
明治大学 経営学部教授 小関 隆志
【ポイント】
年々増加する在留外国人は、言語の壁や金融に関する知識の欠如などから金融サービスにアクセスできないという金融排除も生じている。日本では外国人への金融教育が極めて断片的で、体系化にはほど遠い状態であるが、国際機関や移民の送り出し国・受け入れ国では移民への多様な金融教育の実践が行われており、それらの先行研究を参考にしながら、日本国内でも政策の立案、実践、研究を進めていくことが期待される。
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諸外国におけるICTを活用した金融経済教育の動向と我が国への示唆
㈱大和総研 金融調査部研究員 瀬戸 佑基
【ポイント】
「GIGAスクール構想」の下、日本の学校では急速にICT環境が整備されたが、それに伴い学校教員からは、ICTを活用した金融経済教育用教材の提供を求める声があがっている。しかしながら、日本のコンテンツの充実度合いが諸外国に比べて大きく劣っているわけではなく、単純に周知不足の可能性が高い。金融経済教育推進機構などが提供する講師派遣事業や教員向けセミナー等で、ICTを活用した授業の可能性が積極的に発信されることが望まれる。
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金融経済教育とサステナビリティの接点
㈱日本総合研究所 創発戦略センター
シニアマネージャー 橋爪 麻紀子
【ポイント】
若い世代が、サステナビリティを軸に金融経済教育を学ぶことで、長期的視点の獲得や、社会的責任の理解が進み、個人の経済活動が社会や環境に与える影響を認識、責任ある金融行動をとる意識が芽生える契機になる。若いうちから係わる教育を受けて育った若者が社会に出て活躍する頃には、今よりもサステナビリティが主流化し、ごく普通のものになるはずだ。
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※【ポイント】は事務局で作成したものであり、執筆者の承諾を得たものではありません。
支援活動フロントライン
「がん患者さんのお金の不安を軽くする」
一般社団法人 患者家計サポート協会 代表理事 黒田 ちはる
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ゆうちょ財団トピックス
諸外国のリテール金融における最近のトピックス
一般財団法人ゆうちょ財団 貯蓄経済研究部主任研究員 宮下 恵子
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書評
永瀬 伸子著『日本の女性のキャリア形成と家族 雇用慣行・賃金格差・出産子育て』
兵庫県立大学 国際商経学部 教授 横山 由紀子
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河合 雅司著『縮んで勝つ 人口減少の日本の活路』
島根大学 教育学部 教授 作野 広和
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お問い合わせ先
一般財団法人ゆうちょ財団 貯蓄経済研究部
〒162-0845 東京都新宿区市谷本村町2-1 クイーポビル9階
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