研究

季刊 個人金融2025年春号

発行年月 2025年4月

特集 

人口構造の変化と個人金融

 

世界の中でも際立つ我が国の超少子高齢化、人口減少、東京一極集中といった人口構造の変化がもたらす、家計や個人の金融・経済活動における種々の課題について焦点をあて考察します。

こうした人口構造の変化は、労働力の減少などの課題が生じる一方、その対応を行う中で自動化やAI技術の導入といったイノベーションを促す面もあります。

今回の特集では、人口構造の変化による課題の指摘にとどまらず、ITの活用などによる対応策についても考えます。

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目次

特集

縮減する日本社会の課題

日本医療大学特任教授
札幌市立大学名誉教授 原 俊彦

【ポイント】
 日本が先駆けて突入した少子高齢・人口減少の波は地球全体に広がり始め、「縮減する日本社会の課題」は世界共通の課題になりつつある。結果として生じる有効需要の縮減に如何に対処すべきか、ケインズ政策の見直し、有効需要創出のための所得再配分と財源、グローバルな協力体制について論じる。

少子高齢化社会に対応する政策転換と家計の金融行動の変容

一橋大学経済研究所教授・所長 祝迫 得夫

【ポイント】
 少子高齢化の進行による日本の政策転換・制度整備について論じるとともに、政策が個人や家計の金融行動にどのように影響したかについて検討する。さらには、個人の投資や資産形成で重要な情報ソースについて、最近の学術研究について論じるとともに、個人投資家がより効率的な資産形成を行うための基礎となる金融教育の充実に向け、課題と克服のための対応を示した。

人口減少・少子高齢化社会の本格化と公的年金の機能を踏まえた
ファイナンシャル・ウェルビーイングを高める金融業のあり方について

 大妻女子大学短期大学部家政科教授 玉木 伸介

【ポイント】
 加齢に伴う認知機能が低下した高齢者に対する金融サービス提供体制の構築は、新商品の開発等を含め、金融業が本腰を入れて取り組むべき重要なテーマである。ミクロ的な視点から、金融機関には、顧客に寄り添った利用者サービスの提供や社会保険の活用に係るライフプランニング上の助言が求められる。また、マクロ的な視点から、若年層の資産形成と高齢者の資産取り崩しをつなぐ金融サービスの提供が求められる。

東アジアの高齢化と金利・株価・貯蓄
-退職貯蓄不足回避は可能か-

NIRA(総合研究開発機構)・評議員
財務省財務総合政策研究所・上席客員研究員 木原 隆司

【ポイント】
 東アジアでは急速な高齢化が進展し、金融市場への悪影響が懸念される。「高齢化速度の上昇」が予想されれば、貯蓄を増やすのが合理的であるが、実証分析では、貯蓄を有意に減少させ、金利低下、株価上昇をもたらしている。欧米では貯蓄促進型の確定拠出年金制度(SMT)により継続率・拠出率の増大を実現しており、東アジアにおいても、退職後貯蓄不足を避けるため、ナッジを効かせた金融・年金制度の構築が求められる。

高齢者に寄り添うIT 技術の展望

中央大学商学部特任教授 行木 陽子

【ポイント】
 高齢者のデジタルデバイスの利用率を上げ、必要な機能を十分に使いこなせるようにするためには、高齢者が適切なメンタルモデルを形成しやすくなる表現モデルの設計に加え、音声認識やアンビエント・コンピューティング等の技術を活用した高齢者に寄り添ったサービス設計とテクノロジーの活用が求められる。

テクノロジーによる超高齢社会の金融問題の解決

大和証券(株) エクイティ調査部シニアESG ストラテジスト 長内 智
(株)大和総研 金融調査部 研究員 森 駿介

【ポイント】
日本では、認知機能に問題を抱える高齢者とその金融資産残高が増加している。金融面の課題解決のために様々なテクノロジーの活用が進められているが、テクノロジーは手段であり、認知機能が低下した高齢者の金融問題をいかに改善・解決させるかが重要である。そのためには、テクノロジーと人を両輪とした金融包摂という視点も大切である。

人口減少時代の地域金融機関


(株)三菱総合研究所 金融コンサルティング本部 舟木 貴久
           金融コンサルティング本部 能鹿島 武志

【ポイント】
 2030 年と2050 年のリテール貸出と金融資産のマーケット予測を都道府県単位で実施し、地域ごとの影響を分析した。地域金融機関への影響を顕在化するリスクごとに考察するとともに、人口動態により顕著な違いが生じる地域の金融機関が今後取るべき対応(ダイナミックな経営判断や「選択と集中」等)について示した。

※【ポイント】は事務局で作成したものであり、執筆者の承諾を得たものではありません。

支援活動フロントライン

「~お金は一人ひとりの夢とより良い社会の実現のために〜プロラボの活動」

 特定非営利活動法人 暮らしとお金のPro-Lab.代表理事 尾関 さゆり
                        理事 中部 絵美

書評

近藤 絢子著『就職氷河期世代 データで読み解く所得・家族形成・格差』

金沢大学人間社会研究域教授 小林 大祐   

黒川 博文著『分析者のための行動経済学入門プロスペクト理論からナッジまで、
                    人間行動を深く網羅的に解明する』

近畿大学経済学部教授 佐々木 俊一郎   

季刊個人金融 20年の歩み(2006年~2011年)

2026年夏号で創刊20周年を迎えます。
今号から数回にわたり、20 年を振り返る図表を掲載します。 

 

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