季刊 個人金融2024年秋号
発行年月 2024年10月
特集
社会人に向けた金融経済教育
わが国の金融経済教育については、まず学校教育=若年者に目が行きがちであり、社会人にはあまりフォーカスされていないのが現状です。
社会人で金融経済教育を受けたという認識を持つ者は少ないが、社会人こそが家計管理や老後のための資産形成の必要性に直面しており、金融経済教育による金融リテラシーの向上が切実に求められるところであります。
秋号では社会人に対する金融経済教育にフォーカスし、その課題を洗い出し、今後取るべき方策について考察します。
お申し込み方法こちら
目次
特集
ファイナンシャル・ウェルビーイングにおける福利厚生の有効性
山梨大学名誉教授
福利厚生戦略研究所代表 西久保 浩二
【ポイント】
従業員のファイナンシャル・ウェルビーイング(FWB)の実現において企業内福利厚生が果たす役割は大きい。
最新のデータに基づき、福利厚生が従業員のFWB 形成や金融リテラシー向上に与える影響と、更には従業員の企業に対するエンゲイジメントなどの経営的効果について検証を行う。
|
現役世代男女の資産形成とメンタルヘルス
– 資産の種類及びジェンダー差異に着目して-
千葉商科大学商経学部准教授 大風 薫
【ポイント】
現役世代男女における資産形成の規定要因および資産形成とメンタルヘルスの関係について、資産を流動資産と非流動資産に分類した上で、ジェンダー視点も取り入れて検討した。人生を充実させるための持続的な経済基盤として資産形成を捉え、異なる性格の資産を自らのライフデザインに沿って整えることの重要性を指摘するとともに、そのようなデザインを描くための金融および関連教育の必要性についても論じる。
|
金融リテラシーが金融アドバイス利用に与える影響
豊橋技術科学大学総合教育院教授 宮本 弘之
名古屋商科大学経済学部客員准教授 西出 陽子
【ポイント】
金融アドバイザーによる専門的なアドバイスは、アドバイスを受けた者の金融リテラシーを補完し、より良い意思決定に結びつくことが期待される。多くの場合、金融リテラシーが高い人ほど専門的なアドバイスを受ける構造にあるが、金融リテラシーが低い人でもアドバイスを利用しやすくするためは、心理的負荷や情報探索コストの低減が必要と考えられる。
|
金融経済教育推進機構と認定アドバイザー制度
㈱野村総合研究所 金融デジタルビジネスリサーチ部長 竹端 克利
【ポイント】
2024 年4 月に設立された金融経済教育推進機構が運営する「認定アドバイザー制度」は、民間ビジネスとの棲み分けが慎重に設計されており、「幅広い主体が連携しながら国民全体の金融リテラシー向上と資産形成推進を働きかける」とする国家戦略とも整合している。この先、国民全体に幅広く金融教育を普及させるためには、家計管理や金融に対して普段から関心を持たない「無関心層」への働きかけが長期的な課題となろう。
|
職域における継続投資教育の課題
– 企業規模や雇用形態による格差の観点から-
一般財団法人ゆうちょ財団 貯蓄経済研究部主任研究員 宮下 恵子
【ポイント】
確定拠出年金(企業型DC)の導入は増加基調にあるものの、大企業に偏りがみられるため初職の環境によって老後資産形成に格差が生じている。中小零細企業には低コストで企業年金を導入できる仕組や補助金の支援が必要である。また、職域での金融教育の効果を高めるためには個別具体的なアプローチが肝要であり、従業員本位の制度運営かを客観的に判断できるようなデータ開示も求められる。
|
資産形成の実践を促す「年金の見える化」を起点とした金融経済教育
㈱大和総研 政策調査部研究員 佐川 あぐり
【ポイント】
個人の資産形成制度の利用は国民の一部にとどまっている。資産形成を実践できていない社会人に対して、金融知識や制度に対する理解の不足を解消するための金融教育の充実が必要であるが、ナッジの視点から、「年金の見える化」を金融経済教育プログラムに組み込むことで、資産形成の実践を促せるのではないか。
|
投資未経験者とNISA
熊本学園大学経済学部教授 林田 実
東洋大学経済学部教授 大野 裕之
【ポイント】
投資未経験者のNISA に対する意見や態度を投資経験者と比較したところ大きな相違があり、投資未経験者については、金融教育を受けているとNISA 認知度が有意に上昇することが明らかである。金融教育によって投資未経験者の態度を変化させ、「貯蓄から投資へ」の流れを促進できる可能性がある。
|
※【ポイント】は事務局で作成したものであり、執筆者の承諾を得たものではありません。
支援活動フロントライン
「女性とこどもの自立に寄り添うパートナー」
一般社団法人ウーマンライフパートナー 代表理事 中村 真佐子
|
書評
吉武 理大 著『家族における格差と貧困の再生産―親の離婚経験からみた計量分析』
愛知学院大学教養部准教授 松井 真一
|
小塩 隆士 著『経済学の思考軸 ―効率か公平かのジレンマ』
国立大学法人東海国立大学機構 岐阜大学
教育学部 教授 大藪 千穂
|
お問い合わせ先
一般財団法人ゆうちょ財団 貯蓄経済研究部
〒162-0845 東京都新宿区市谷本村町2-1 クイーポビル9階
Tel. 03-6631-1003 / Fax. 03-6631-1008