1. ホーム >
  2. 金融・経済コラム >

金融・経済コラム

国と地方の借金は誰が背負うのか

財政制度等審議会財政制度分科会は、2014年4月28日、国と地方を合わせた財政の長期試算を公表した。政府が策定している中期財政計画では、公共事業などの政策全般に充てる費用を税収と税外収入でどれだけ賄えているかを示す基礎的財政収支(プライマリーバランス)を2020年度までに黒字にするとしているが、その場合でも収支改善に取り組まなければ、2060年度には国と地方の借金は、国内総生産(GDP/名目経済成長率が3%として2060年度で約2,053兆円と予測)の約4倍の約8,150兆円に達すると見込んだ。また、基礎的財政収支の黒字を達成できなかった場合には、GDPの約5.6倍の約11,400兆円という想像を絶する額に達するとしている。

もちろん、2020年度以降収支改善へ取り組まないとか、2020年度に基礎的財政収支を黒字化できないとかといった悲観的な前提を置いたものではあるが、中期財政計画には黒字化の具体的な施策は明記されておらず、黒字化は容易ではない。また、この報告によると、黒字化が未達成の場合、収支改善は増税や歳出削減などの方法により2021年度から2026年度まで6年間、対GDP比11.94%(約60兆円)の改善を継続する必要があり、そのような懸命な努力がなされても、借金は、せいぜい、GDP比100%(約2,053兆円)に止めることが出来るというものだ。現在の1,000兆円を超える借金が2倍になり、絶対額は増えるものの、3%成長でGDPも4倍になり、借金とGDPが同額に抑えられるというのだ。借金が無くなるわけではない。このGDP比100%というのは現在のアメリカの借金と同じ程度だが、欧州委員会は加盟国に財政の健全度の指標としてGDP比60%程度に抑えるべきと示しており、これでも甘いと言わざるを得ないのではないか。

この試算は、このままでは次の世代に多額の借金を付け回すだけでなく借金は確実に増え続け、いずれ大幅な増税と歳出の削減を迫られるという意味で、社会に大きなインパクトを与えるはずだったが、マスメディアの反応は鈍く、国民の関心も高いとは言えないようだ。中には、財務省が2015年10月からの消費税の10%への引き上げを何としても実現するため危機感を煽っていると冷やかに指摘する向きもある。緊縮財政を迫られて、公共事業や福祉医療などの予算が大きく切られることへの警戒感もあるのだろう。だが、本当に無関心でいいのだろうか。


2014年5月9日、財務省は、2013年度末現在で国の借金は1,025兆円に達したと発表した。国債は854兆円だが、95%は日本国民が保有しており、これが、GDPの2倍を超え、先進国では断トツの借金を抱える、我が国が先般のギリシアやイタリアなどのように財政危機を招かない理由とされている。OECDが我が国に度々財政健全化を指摘しながら、厳しく健全化推進の具体的成果を求めない所以だろう。しかしながら、毎年、多額の国債の償還費を得るため、国債の発行を続けざるを得ず、1,400兆円超とも言われる国民の保有する金融資産による買い支えが限界に近づいていると判断した財務省は、国債の海外への売り込みを担当する専門的な部署「国債政策情報室」を7月にも設置する予定だ。国を挙げた国債の売り込みで、国民保有の国債が償還を迎え、外資が国債を買い増していく状況が加速していくことになるだろう。近い将来、金融危機に晒された欧州の国々と同じ構図になることは避けらないのではないだろうか。そうなれば、借金が漫然と積み重なり、日本の財政への不安が高まった時、外資が資金を引き揚げ、国債金利の高騰を招いて暴落する悪夢が絵空事ではなくなるのではないかと懸念するのは杞憂だろうか。


今回の試算には、消費税10%増税は織り込み済みだが、その後の増税は想定されておらず、収支改善のための具体的歳出削減方策も明記されていない。高齢社会の進展で、社会保障関係費は、高齢者の病気予防対策などで増大を阻止できてもせいぜい現状維持がいいところだ。景気を維持し税収の安定的確保・増大を実現するためには公共事業費もゼロにはできず、投資を呼び込むため法人税の実効税率引き下げも俎上に上っている。緊張する周辺諸国との軋轢など国際問題に的確に対応するために外交防衛費も抑制は至難の業だ。このような情勢の中で、財政破綻を招聘しないように、この試算に示された2060年度に借金をGDP並みに抑えるという財政健全化の道筋を辿るためには、増税、特に消費税の15%ないし20%への増税は避けられないのではないか。現世代が自ら痛みを引き受けて次世代以降の負担をいくらかでも軽くするか、目をつぶって今を楽しみすべて次世代以降にリスクを付け回すか。いずれにしても、国民が厳しい選択を迫られる時期は、刻一刻と近づいているのは間違いない。


このページの先頭へ戻る