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金融・経済コラム

人間原理

非常に複雑なモノ(世界・システム)が整然と動いている(様に見える)。これは驚くべきことである。宇宙、生態系(生物社会)、人類社会、国家、地域社会、経済、会社や組合、学校等どれもが極めて複雑である。

この複雑極まりない世界が、単純な法則で記述できると科学や学問が主張している。全てが混沌としていない理由は何であろうか。

宇宙については、137億年前のビッグバンで誕生し、今も膨張しているが、我々の生きる地球、太陽系、銀河宇宙の構造や構成物質等までかなり詳細に把握されている。先人達の努力の賜物であるが、逆に理解できるように創られているとも言える。

対称性、数学という言語で記述できる仕様や仕組み、更に理由は不明であるが種々の定数が、少しでも現在あるものと違っていれば、この宇宙は存在せず、人類も存在しない。

いわば、我々が存在する宇宙は、「出来すぎ」ているのである。これが、宇宙物理学などで「人間原理」と言われるものである。「人間」が理解可能なように世界は出来ていることも「人間原理」である。

現生人類は、数万年前にアフリカを出発して世界中に拡散した。当初は、少数の集団、数家族から十数家族からなる集団であったと思われる。生活手段は、狩猟・採集であった。

当時から、自己に対する愛(自己保存欲)は、動物一般の特性であり、当然、各個人にあったが、自分の家族、家族集団に対する愛、自集団に対する愛がなければ、この集団は生き残ることが出来なかったであろう。

自集団に対する愛は、自集団以外に対する排他主義、縄張り意識を生み、戦いや争いなどをも発生させた。

世界中に拡散した人類は、その数を増やすとともに、数千年前には、メソポタニヤや中国の一部などで農耕が始まり、これにより部族国家や宗教国家、帝国など様々の地域的国家が誕生した。

数百年前には、産業革命により近代的工業生産が始まり、近代国家、国民国家がヨーロッパに誕生した。これらの欧州諸国家は、ヨーロッパで戦いを繰り返すとともに、世界中の国々、地域を殖民地として組み込み、地球規模の国家が発生した。

二十世紀には、これらの国家が争い、第一次世界大戦、第二次世界大戦によって、世界中に悲惨をもたらし、次の世界大戦は、人類の滅亡に繋がると考えられる。世界大戦型の戦争ではなく、地域的、宗教的、人種的貧富格差など種々の理由で戦争は続いており治まる気配はない。

二十世紀後半になって、情報革命により、世界中の情報が世界中で流通し、また交通手段の発達も相俟って、急速に世界は一つになりつつある。いわゆるグローバリゼーションである。

現実に、我々の食料もエネルギーも衣類も、ほとんど世界中で作られ、持ち込まれたものである。

自己愛は、全ての生物に共通であり、人間にとっても生存核となるものであり、昔も今も存在し続けている。

自集団中心の愛(倫理)については、家族・部族など小集団のみではなく、国家などの大集団にも現存し、グローバルな世界に対応する世界中心的な愛(倫理)、多世界中心的な愛(倫理)、宇宙中心的な愛(倫理)にまで拡張される。

これらの愛(倫理)は、それぞれに排他的なのではなく、多重的に入れ子構造になっており、大きな愛にはより小さな愛が同心円的に包含される。

人類もその一員とする生物は、三十数億年前に発生し、進化というプロセスによって現在の世界と生き物に形づくられた。

人類が自集団を拡大し、グローバルと呼べる世界社会を形成しつつあることを書いたが、人類以外の生物も種々の進化の道を辿った。

社会性生物の問題である。アリやミツバチは真性社会性生物である。女王、労働、兵隊など体の構造まで特殊化されており、集団として一体で子孫を残す必要がある。利己的な遺伝子という言葉があるが、子孫を残し、遺伝子を残すことが、生物の生存そのものであるとされる。女王の遺伝子は確かに残るとして、労働者(働きアリ・働きバチ)の遺伝子はどうなるのか。兵隊についてはどうなのかという問題である。

一見利他主義に見えるものをどう説明するか。諸説あったが、「多層レベル淘汰」で説明がつきそうになっている。

人類社会も見方によっては、社会性生物に近い生き方をしているように見える。

真性社会性生物(アリやハチ)との最大の差異は、遺伝子によりその役割が決定されているのに対し、人間はそれぞれの個人が、自らの意志で、或いは社会の圧力等によって、分業のルールから分業のやり方までを決定するところにある。

政治・経済・司法など社会のあり方を自ら決める必要があり、かつ、これらが非常スピードで変化しつつある。

数万年、数十年、数百年、数十年と社会の各分野の変化のスピードは指数関数的に加速しつつある。対象範囲も家族、部族、国家、世界と拡大している。

自然科学は、「人間原理」に支えられてかもしれないが、大きな進歩を実現しているが、社会化学は、多層的・多重的な構造である。人間社会のあり方に対して、多くの課題を抱えて、次なるブレークスルーを見つけられていない。社会科学のどの部分に問題があるのであろうか。


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