1. ホーム >
  2. 金融・経済コラム >

金融・経済コラム

サブプライム問題

サブプライム問題とは

「サブプライム問題」という言葉を新聞や経済雑誌で、最近よく目にすると思います。この「サブプライム問題」とはいったい何かと詳しく知らず、「サブプライム問題が原因で日本の景気が悪くなった」とか「サブプライム問題が原因で日本の株価が下がった」という記事を読み流しておられる方も多いと思います。そこで、ここでは「サブプライム問題」の内容を簡単に説明し、その影響がどのように波及していったかを述べてみたいと思います。


サブプライムとは何か

「サブプライム」とは、「プライム」に対しての言葉です。「サブプライム」は、「サブプライム・ローン」のことであり、要するに一般の人が家を購入する際に借りる「住宅ローン」のことです。それを米国では、「所得の低い人向けの住宅ローン」を「十分に所得のある人向けの住宅ローン」と区別して「サブプライム・ローン」と呼んでいるのです。当然、「十分に所得のある人向けの住宅ローン」は「プライム・ローン」となります。実は、米国の一般的な住宅ローンの分類では、「サブプライム・ローン」と「プライム・ローン」の中間に「Alt−A」というカテゴリーがあります。したがって、米国の「住宅ローン」の分類は信用力の高い順に「プライム」、「Alt−A」、「サブプライム」ということになります。米国の「住宅ローン」の残高は、「プライム」が最も多6兆9,000万ドル、「Alt−A」と「サブプライム」はそれぞれ1兆1,000万ドル、1兆5,000万ドルといったところです。住宅ローン全体で9兆5,000万ドル、日本円にして約1,000兆円となります。


サブプライム問題の影響でどの程度株価が下がったか?

「サブプライム問題」が住宅ローンの延滞率を高め、米国のGDPを押し下げ、結果的に住宅関連の会社や金融機関中心に株価を大幅に下落させたことになります。

まず、住宅ローンの延滞率ですが、2008年4月現在では2007年12月の数字しか発表されていません。住宅ローン全体の延滞率は5.82%ですが、2007年3月が4.84%ですので、1%程度上昇したことになります。注目の「サブプライム・ローン」の延滞率は17.31%ですが、「サブプライム・ローン」の中でも金利変動型(ARM)の延滞率は20.02%となっています。2007年3月時点では、それぞれ13.77%、15.75%ですから、4%程度上昇したことになります。金利変動型(ARM)は、日本のステップ償還型住宅ローンに近く、返済し始めて数年後に金利が上昇するタイプの住宅ローンです。サブプライムの金利変動型の延滞率は20.02%ですので5人に1人が住宅ローンを返済できないことになります。その結果、日本でもニュースで報道されていますが、差し押さえ物件が急増しそれを買い漁るツアーまがいの商法がまかり通っています。

今回の「サブプライム問題」によって株価はどの程度下がったのでしょうか?本来ならば、米国国内の問題にすぎないので、米国の株価のみが下がり世界中には波及しないはずです。ところが、現在の世界経済は米国中心にまわっているため、米国のバブル崩壊はそのまま世界中にすぐに伝播する仕組みになっています。しかも、焦げ付いた証券化商品(CDO)の保有は米国の金融機関と欧州系の金融機関が半々に保有しています。株式市場で「サブプライム問題」が話題になったのは、2007年の夏ごろです。「サブプライム問題」が騒がれて、住宅金融会社の破綻が報道されたのは2007年8月のことです。NYダウは7月から8月にかけ2,500ドルほど大幅に下落しました。しかし、米国のFRBはGDPへの影響を考慮し、2007年9月には0.75%もの大幅な政策金利の引き下げを行った結果、すぐにNYダウは持ち直し、10月には14,110ドルの最高値更新となりました。そのころの株式市場には、この「サブプライム問題」はたいしたことはないという雰囲気がかもし出されていました。しかし、事態はそんなに甘くなく、その後のNYダウは大幅に下落、2008年1月には11,630ドルまで下げてしまいました。率にして25%程度の下落です。この間、基本的に世界中の株式市場が下落しました。しかし、「サブプライム問題」の震源地である米国または欧州(ドイツ、フランス、イギリスの主要国)の下落率はおおむね20〜25%程度であるのに対し、日本の日経平均は36%、中国上海は50%、香港は36%、インドは31%といったふうに2007年に大きなバブルがあった市場の下落率が高かったのです。

新興国の株式市場のボラティリティは高いのが当たり前と言ってしまえばそれまでですが、日本は新興国ではないはずなので、日本の株式市場の下落率が欧米と比べ高いのは、ほかに原因があったと思わざるを得ません。


サブプライム問題がいかにして金融機関を破綻に追い込んだか?

「サブプライム・ローン」が要するに住宅ローンであることはわかったと思います。ここでは、「サブプライム問題」が、どのようにして米国の金融機関(証券会社・銀行)を破綻にまで追い込んだかを説明したいと思います。

米国では、1970年代からモーゲージ担保証券(MBS)が発達しており、住宅ローンを貸し付けた銀行が住宅モーゲージ担保証券(RMBS)を発行する専門の金融機関(ファニーメイやフレディーマック)に売却するというスキームになっています。つまり、貸し付けた銀行は貸し倒れになっても困らないよう、直ちにファニーメイなどに売却してリスクを回避します。住宅ローンを購入したファニーメイは住宅モーゲージ担保証券(RMBS)を発行し、リスクをRMBSの購入者へと転嫁します。ここまでなら、現在の日本でも行われており、最後のリスクテイカーはRMBSの保有者となります。ところが、米国の住宅ローン、特に住宅価格が上昇し始めてからの住宅ローンは、明らかに値上がりを見越しての住宅の購入が増えてきており、住宅ローンを実行するための審査などもおざなりになり、明らかに返済不能に陥る可能性が高い人(サブプライム)に対しても積極的に貸し込んでいったと考えられます。それでも、結局最後のリスクテイカーはRMBSの保持者となります。しかし、昨今のRMBSは姿を変え、証券化商品(CDO)となって主に欧米の大手金融機関に売却されていったのです。その証券化商品(CDO)を大きく取り扱っていたのが、ベア・スターンズという米国で 5番目の証券会社だったのです。もし、ベア・スターンズがすべてのMBSやCDOを売却してしまったら、破綻の憂き目にはあわなかったでしょう。しかし、そんなうまい話はこの世の中にはありません。このようにバブルがはじけて大損をするのは、その商品を大きく取り扱った人(会社)と決まっているのです。結局、ベア・スターンズはFRBの指導もあり、JPモルガンにたった1株10ドルで買収されてしまったのです。ベア・スターンズの株価は2007年1月には170ドルもしていたことを考えると、このようにリスクの高い商品に積極的に投資する金融機関のリスクは非常に大きいと悟らざるを得ません。


サブプライムに関連する損失

今回の米国の「サブプライム・ローン」に関連する各金融機関の損失は、いくらぐらいになるのでしょうか?世界の70社を超える大手銀行・証券会社の発表(2008.4.21)によると、資産評価損と貸し倒れ損失は合計2,900億ドル(約30兆円)でした。そのうち、資産評価損が2,478億ドルと大部分を占めています。資産評価損は、その名のとおり評価損であり実現したわけではありませんが、評価損のうち何割かは実現する可能性は高いでしょう。貸し倒れ損失は、実現したものと考えられます。

最も損失が大きい金融機関は、シティグループであり、その損失額は409億ドルに上ります。損失額全体の約14%となります。第2位はUBSで、損失額は380億ドル、第3位はメリルリンチで、317億ドルとなっています。この上位3社で、損失額全体の38%にも達します。しかも、この3社は、ソブリン・ウエルス・ファンドなどから巨額の出資を受け入れています。シティグループは、アブダビ投資庁(ADIA)から75億ドル、メリルリンチも、テマセク(シンガポール)から44億ドルの出資を受け入れています。不思議なのは、欧米の金融機関には、なぜこのようにいろんなところから救いの手が差し伸べられるのでしょうか?振り返って15年以上前に日本の金融機関も同様な憂き目にあいました。しかし、日本の3大銀行グループは現在のシティグループやメリルリンチのように外国の資本を受け入れることはありませんでした。旧長銀や旧日債銀が買収されるときの日本での論調は、「ハゲタカが骨の髄までしゃぶりつくす」といった江戸末期の尊王攘夷論に似たものでした。結局、当時の日本政府の対応がそうさせなかったのでしょうか?

しかし、このなかで注目されるのは地域の内訳です。2,900億ドルのうち、米系1,419億ドル、欧州系1,250億ドル、その他(中国、日本など)232億ドルとなっています。欧州系の銀行・証券会社が米系に匹敵する損失を出しております。CDOなどの証券化商品を、UBSやドイチェ銀行など欧州系の大銀行に積極的に販売したことが伺われます。結局、UBSは、シンガポール政府投資公社(GIC)から98億ドル、中東の投資家から18億ドルの出資を受け入れています。

実は、日本の大銀行・証券会社もサブプライム関連の損失を発表しています。みずほフィナンシャルグループが最も多く、55億ドル、三井住友フィナンシャルグループ、野村證券がそれぞれ10億ドルです。合わせて75億ドルとなります。


日本の不良債権処理との比較

今回の「サブプライム問題」は米国発ですが、日本でも同様なことが起こっています。実は1990年からのバブル崩壊で、日本の大手金融機関は青息吐息になり、その結果公的資金が注入され金融機関の大合併が相次ぎました。まず、三井銀行と太陽神戸銀行が合併し、太陽神戸三井銀行になり、その後住友銀行とも合併し、現在の三井住友フィナンシャルグループとなりました。また、日本興業銀行、第一勧業銀行、富士銀行の3行合併でみずほフィナンシャルグループとなりました。さらに、東海銀行と三和銀行が合併しUFJ銀行に、三菱銀行と東京銀行が合併し東京三菱銀行となった上、この両者が合併して三菱UFJフィナンシャルグループとなりました。

米国でも金融機関の大合併がおこなわれています。現在のシティグループは、シティコープとトラベラーズグループが合併してできたものであり、そのトラベラーズグループはソロモンブラザーズとスミスバーニーが合併してソロモンスミスバーニーとなり、それがトラベラーズと合併してトラベラーズグループとなったものです。このシティグループは、結局日本の日興コーディアルグループを買収して、日興コーディアルの株式をシティグループの株式にしてしまいました。また、JPモルガンとチェース銀行が合併してJPモルガンチェースとなりました。今回、ベア・スターンズを買収したのがJPモルガンチェースです。

そこで、18年前から始まった日本の不良債権処理との比較ですが、最も違うのは不良債権処理のスピードです。日本の不良債権処理は15年余りに渡って延々と続けられ、いつになったら終わるのかというイメージが業界全体に流れていました。今回の米国のサブプライム問題から始まった不良債権処理は、始まってから9ヶ月でその全貌がほぼ明らかになり、危険な金融機関に対する資本注入などもすばやい対応となっています。もっとも、これからさらに損失額が膨らむ可能性は否定できませんが、FRBをはじめ、米国政府なども処理に対する決断は早いものでした。それが、日本の不良債権処理と最も大きな違いです。日本の場合、バブル崩壊が始まってから 1〜2年間は何もしなかったに等しいのです。その間、株価は下げ続け、株価がピークの1/3になって始めて対策らしきものを始めたにすぎません。結局、完全に不良債権処理が終わるのは15年後、よく経済セミナーで言われる「失われた10年」の現実の姿です。

このページの先頭へ戻る