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金融・経済コラム

貯蓄金融機関と郵便貯金

貯蓄金融機関

貯蓄金融機関とは、主に個人に貯蓄を奨励し、その資金を個人生活の安定などのために地域還元することを目的とする公益的な金融機関であり、貯蓄銀行もしくは郵便貯金の形で世界中に普遍的に存在する機関といえます。

その歴史は古く、慈善や相互扶助を目的とした機関を前身に、貯蓄銀行は18世紀後半から、また、郵便貯金は19世紀後半からその貯蓄銀行の一類型として発達してきました。

貯蓄金融機関の特徴は、商業金融機関が比較的小口の金融を扱うことがない状況の下で、勤労者などの庶民を対象として勤倹貯蓄を奨励し、資産の貯蓄手段を提供し、安全確実に資産運用を行ってきていることにあります。

まず、イギリスで住宅金融組合(1775年)、信託貯蓄銀行(1810年)が、次いでドイツで民営貯蓄銀行(1778年)、地方自治体による貯蓄銀行(1801年)が設立され、また法的にも制度整備も進められました。19世紀初頭に、他の国にも貯蓄金融機関制度が伝播していき、フランスで普通貯蓄金庫(1818年)が、イタリアで貯蓄銀行(1822年)が、アメリカで相互貯蓄銀行(1816年)、貯蓄貸付組合(1831年)が設立されました。

貯蓄金融機関の経営及び運営組織は、相互組織や株式会社組織、さらに国立、公立、州立機関など国によって様々ですが、貯蓄の奨励と預金者の保護を通じた個人の資産形成と、集まった貯蓄資金を道路、公園、港湾、学校、病院などの公共財の充実、住宅、上下水道の整備など民間に任せておいては十分な資金が供給されない分野に投入することによって、国民生活の向上に資するという社会的使命を担ってきています。

貯蓄金融機関は、それぞれ歴史的背景を異にし、様々な発展過程を経ながら、ヨーロッパの各国やアメリカで、ほぼ同様な特徴・社会的使命を有する貯蓄金融機関制度として定着して行きました。

2006年9月現在、世界中で103機関、2,000を超える貯蓄金融機関が活動しています。(世界貯蓄銀行協会(WSBI)資料から)


郵便貯金

こうした貯蓄金融機関は、その成立・発展過程において、金融機関の普及した地域が都市部に集中するなど限定的であり、経営陣に十分な資金運用能力がなかったり、預金を着服するケースが多数発覚したり、あるいは詐欺事件から破綻する銀行も現われるなどの問題が出てきました。

そこで、安全・便利で効率的な運営を行い、郵便局を拠点とする貯蓄金融機関の創設が提唱され、1861年に世界で始めての郵便貯金制度がイギリスで郵便貯蓄銀行として創設されました。

このように、主に郵便局を窓口として金融商品・サービスを提供する貯蓄金融機関は「郵便貯金」に分類されています。郵便貯金の特色は、全国ネットワークの展開により、信託貯蓄銀行や住宅貯蓄組合が開設されていない地域にも貯蓄サービスを提供できること、切手貯金制度により、より少額の貯蓄の道を開いたことなどが上げられ、その残高は急速に伸びていきました。

イギリスで郵便貯蓄銀行として郵便貯金が創設された後、日本では1875年に、イタリアでは1876年に、フランスでは国民貯蓄金庫として1881年に、比較的速やかに各国で郵便貯金制度が取り入れられて行きます。

特に郵便貯金は、集まった貯蓄資金を道路、公園、港湾、学校、病院、住宅、上下水道の整備など公共財を充実できる分野に投入する面が特に評価され、アジア、アフリカの各国で郵便貯金制度が次々に導入されて行きました。

2006年9月20日現在、世界40か国以上で、郵便局を店舗として、あるいは代理店として郵便貯金が取り扱われています(世界貯蓄銀行協会(WSBI)資料から)。なお、1990年末の統計では、アフリカ35か国、アメリカ5か国、アジア16か国、ヨーロッパ20か国、オセアニア1か国とありますから、その後の各国における金融再編など金融・経済を巡る動きが大きく影響しているものと考えられます。


世界貯蓄銀行協会

世界各国の郵便貯金や貯蓄銀行などは、国民に身近な金融機関(リテールバンキング)として、個人の金融ニーズに積極的に対応してきました。これらの貯蓄金融機関は、貯蓄の奨励と預金者の保護を目的として1924年に国際貯蓄銀行協会(INTERNATIONAL SAVINGS BANKS INSTITUTE:ISBI)を設立し、この活動は、現在、世界貯蓄銀行協会(WSBI)に引き継がれています。

1991年1月現在で、81か国、ISBI直接加盟機関118、傘下に約2,800の貯蓄金融機関を擁していましたが、2006年9月20日現在では、世界89か国、WSBI直接加盟機関103機関、傘下に2,000を超える貯蓄金融機関を擁しています(世界貯蓄銀行協会(WSBI)資料から)。


日本の郵便貯金と貯蓄金融機関

日本の郵便貯金は、明治8年(1875年)、イギリスの郵便貯金制度を手本として「郵便の父 前島 密」によって始められ、郵便為替(1875年)、郵便振替(明治39年・1906年)とともに為替貯金事業と呼ばれました。

世界の郵便貯金の中では、イギリス、ベルギー、ニュージランドに次いで4番目に創設されました。

郵便貯金の創設に先立ち、国立銀行条例が明治5年(1972年)に公布され、翌年に第一国立銀行が創設されていますが、貯蓄預金が認可されたのは明治11年(1878年)ですから、郵便貯金が日本で最も早く創設された公的な金融機関ということになります。その後、国立銀行、私立銀行、日本銀行が順次設置されて行きます。

貯蓄銀行に関しては、明治13年(1880年)初の専業貯蓄銀行である東京貯蔵銀行が認可され、明治26年(1893年)に貯蓄銀行条例が東京市で施行され、明治33年(1900年)末には701行となりました。大正11年(1922年)貯蓄銀行法が施行されましたが、昭和24年(1949年)1月に最後の貯蓄銀行が普通銀行へ転換したことにより実質的にその役割を終え、貯蓄銀行法は、昭和56年(1981年)に廃止されました。

したがって、現在、日本には貯蓄銀行という名称のついた金融機関は存在しません。これまで郵便貯金が、日本唯一の貯蓄金融機関としてその役割を果たしてきました。また、世界貯蓄銀行協会に加盟し、機関として理事の一員となり、協会の活動に積極的に参画してきていました。

郵便貯金は、駅逓局、逓信省、郵政省、郵政事業庁、日本郵政公社へと実施主体が変遷し、平成19年10月1日からは「ゆうちょ銀行」へと引き継がれ、また、郵便貯金法も同日廃止されて、今後、銀行法に基づき運営されることとなります。

ゆうちょ銀行は、直営店(234店)のほか、郵便局を窓口(代理店)として引き続き、金融商品・サービスの提供を行っていくとともに、、企業コンセプトとして「あらゆる人に開かれた銀行」「究極のリテールバンク」を目指していますので、今後のゆうちょ銀行の歩みについては大いに関心が持たれるところです。

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