4.算出結果

 前節までに示した計算方法に従って得られた料金指数を表4及び表5に示す。

表4 通話料金指数(加入電話サービス)

表5 通話料金指数(携帯電話サービス)

 

さらに、参考までに、1996年度時点で比較した加入電話サービスと携帯電話サービスの通話時間一秒あたりに課される料金の絶対額を次に示す。
 表4に示されている加入電話サービスに関する料金指数の推移をグラフの形で表現したものがグラフ1である。比較のために総務庁統計局が作成した消費者物価指数(CPI)と、月々の基本料を包含して作成された通話料(指数)を併せて示してある。CPIが右上がりに推移しているのに対して、通話料金指数・通話料(指数)はともに右下がりに推移している。また、通話支出に占める基本料金の大きさ及び基本料に関しては通話料金ほど大幅な値下げがなされてはこなかったことを反映して、通話料金指数のほうが通話料(指数)よりも大幅な低廉化の度合いを表現していることが特徴的である。なお、1976年時点での大幅な料金高騰は、同年11月に実施された単位料金の改定(7円180秒→10円180秒)によるものである。また、NTT独占の時期(1978年度→1986年度)は年平均で2.44%の料金低廉化が行われているに過ぎなかったが、NCCの参入後(1986年度→1996年度)は年平均4.63%の値下げが行われたことが示されており、第一種電気通信事業分野への競争原理の導入は料金低廉化に明らかに貢献しているという結果が導かれている。

グラフ1通話料金指数の推移

(地域別、1996年度の全国平均=100)

 

 

沖縄県については、料金水準低廉化のインパクトは共通に観察できるものの、全体として他地方とは異なる動きを示している。これはその通話パターンの特徴によるものと考えられる。すなわち、グラフ3に示すとおり、沖縄県発信の対象電話サービスの利用は、その大部分がMA内及び隣接MA間という極近距離と500km超の超長距離の2つのセグメントに集中しており、その他の地方とは著しい対照を示している9。そのため、沖縄県の通話料金指数は変化する料金表のごく一部からの影響を受けるにとどまり、その結果、沖縄地方の通話料金指数は他地方のそれとは異なる動きを示したのであろう。



次に、全国を10地域に分けて加入電話サービスに関する料金指数を集計した結果をグラフ2に示す。各電気通信事業者の料金表は全国に普遍的に適用されるため、ここに示されている地域格差は、1996年度時点における各地域の通話パターンの差を反映していることになる8。1979年度以降の料金水準の低廉化により全ての地域の料金指数が右下がりに移行しているのに加え、併せて実施されてきた遠近格差の縮小によって通話パターンの差の影響が吸収され、沖縄県を除く各地域の指数が収斂してきているのが特徴的である。具体的には、1979年当時料金水準が全国最低であった東海地方に関しては値下げ幅が45.6%にとどまったのに対して、全国最高水準であった北海道地方と同2位の九州地方については60%以上の値下げが行われた。その結果、1979年度には最高の北海道地方(270.6)と最低の東海地方(184.5)の間には、1対1.46の格差があったが、1996年度になると、最高の信越地方(106.2)と最低の九州地方(96.7)の間には1対1.10の格差しか存在し ていない。



グラフ2 通話料金指数の推移(地域別、1996年度の全国平均=100)

グラフ3通話距離の観点から見た通話パターンの地域差(1996年度)

 

次に、表5に示されている携帯電話サービスに関する1996年時点の通話料金指数の地域差を視覚的に表現したのがグラフ4である。比較のために、同年度の加入電話サービスに関する料金指数を並べてある。ちなみに、両系列とも全国平均を100とした数値である。

 

グラフ4 携帯電話及び加入電話の通話料金指数(地域別、1996年度の全国平均=100)

加入電話に関する地域間格差が1.10倍であったのに対し、携帯電話に関しては1.29倍となっているのが第一の特徴である(但し、沖縄県を除く)。また、加入電話に関する料金水準が全国水準に比較して高い地域が、携帯電話に関する料金水準の全国レベルとの高低に必ずしも一致しておらず、両サービスの料金体系そのものの相違と各地域の両サービスを利用する通話パターンの違いを反映した結果となっていることが推察される。

 表6に示したデータに基づいて両サービスの料金水準を絶対値で比較すると、携帯電話サービスの通話料金は加入電話サービスの4.35倍(全国平均)となっており、携帯電話市場における競争導入は急速に進んできたとはいえ、両サービスの間には依然として大きな料金格差が存在していることがわかる(グラフ5)。料金面のみを考慮した場合、両者の位置関係が逆転することは、当分の間は、おこりにくいといえるだろう。