1. ホーム >
  2. 刊行物 >
  3. 季刊 個人金融 >
  4. 季刊 個人金融 2017年春号 >
  5. 要旨11

金融資産を全く保有しない家計の状況
−「第1回 家計と貯蓄に関する調査」分析結果−

 

広島大学名誉教授
松浦 克己

東洋大学 経済学部 教授
竹澤 康子

要旨



近年、金融資産を全く持たない家計の存在が、大きな社会経済問題となってきている。このような家計は、失業や病気等何らかのアクシデントがあれば直ちに窮迫することになる。本稿ではこの問題を取り上げ、ゆうちょ財団が実施した「第1回(2013年)家計と貯蓄に関する調査」の個票データを用いて、金融資産を全く持たない家計の状況を明らかにし、無保有に至った直接的な原因は何かを分析する。
まずこの調査が対象としている金融資産の把握方法を解説し、金融資産を全く保有しない家計について、他の全国調査と比較しながら全体状況を把握する。次に世帯主の年代別、学歴別、引退しているか否か、雇用形態別、性別、住居の所有形態別、住居の取得方法別などさまざまな属性ごとに、ゼロ金融資産家計比率に統計的に有意な差があるのか否かの差の検定を行う。さらにprobit モデルを定式化して実証分析を行い、その推計結果を報告する。金融資産無保有家計の増加は、高齢化の進展と就業状態の不安定化によってもたらされていると巷間言われているが、差の検定とprobit モデルによる推計の2つの統計・計量分析結果は、その通説が支持されないことを示している。つまり、高齢化や就業の不安定化は、家計の金融資産無保有と直接的に結びついている訳ではないことが示唆された。