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心の会計と人の購買・借入行動

 

甲南大学 経済学部 教授

森  剛志

要旨



従来の経済学では、お金にラベルをつけることはしない。しかしながら、現実の人間の購買・借入行動をアンケートや実験に基づいて丹念に実証していったリチャード・セイラーは、人は状況(時間・場所など)に応じて複数の心の会計簿を心の中で開設し、お金にラベルをつけるという‘心の会計'の概念を提唱した。本稿は彼の提唱した心の会計の概念を提示された具体例や実証分析結果をまじえて解説したものである。彼が提唱した心の会計に従えば、利得と損失が同時に起こる心の会計処理に関しては、統合会計と分離会計をうまく使い分ける人間の特性を説明することができる。複数の結果を同時に統合して評価する方が心理的によい場合もあれば、分離して別々に会計処理する方がよい場合もあるというわけである。タイプの異なる個人の借入行動においても、注目する借り入れ要素は異なることが示される。このような会計処理は従来の経済学では説明できていなかった領域である。