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奨学金・教育ローン問題の構造
―大学進学はイリュージョンか―

 

長崎県立大学 国際社会学部 准教授

小原 篤次

要旨



大学など教育予算が抑制されるなか、学生本人を債務者とする貸与型奨学金の拡大によって、高い大学進学率が支えられてきた。大学によっては7 割の大学生が貸与型奨学金を利用している。採用が減少し、非正規雇用が拡大した平成デフレやリーマンショック後の雇用環境で、若者や日本学生支援機構は回収強化を迫られた。海外留学しない学生は「内向き」と批判されたが、大学生の教育負担を社会でシェアする合意形成が後手に回った。教育支出、大学進学率や奨学金貸与率には地域差も大きい。国の給付型奨学金は来年度、新入生の2%程度に支給される。一層の拡大には国の財源の議論が必要になる。秋田県や、鹿児島県長島町の「ぶり奨学金」のように、地方自治体独自の修学支援制度も創設され始めた。最近の有効求人倍率は記録的高さで雇用状況が回復している。就職氷河期に契約した利用者に対する債務の軽減策も検討しなければならない。高校までの学習塾、習い事の支出も大きいだけに、家庭向けのライフプランニングも必要である。